(1) 動物の 脳・神経系の比較:


  原索動物(脊椎を持たない海産動物の総称: ホヤ、ナメクジウオなど)よりも高等な動物には、神経系 と  が存在する。

  また、脊椎動物の脳の「発生」( 注) ”進化”ではない!)は、”原始的な脳”ともいうべき 前脳、中脳、後脳の発達から始まり、後脳からは 小脳と 橋が形成され、脊髄の先端が肥大化して 延髄となる。
  この 延髄、橋、中脳、間脳 を総称してして 脳幹”生命脳”)と呼ぶ。これらは、脊椎動物に共通する部分で、呼吸、循環、消化、睡眠などの生命活動を維持する部分である。
  間脳の視床下部には、食欲性欲の中枢があり、その付近には攻撃性の中枢がある。(本能的な欲求) また、視床下部は、循環器、呼吸器、消化器、瞳孔、涙腺などの働きを自動コントロールする 自律神経の中枢でもある。

  脊椎動物の脳を比較すると、① 魚類では、水中での運動機能をつかさどる脳の後ろの部分(小脳”運動脳”)のみが発達している。 ② 両生類・爬虫類では、小脳が魚類よりも小さく、脳幹と 大脳基底核の部分が脳の大部分を占めるようになる。大脳基底核”動物脳”・・いわゆる”ワニの脳”)は、本能的な情動(原始的な感情)をつかさどると同時に、無意識な手足の運動や姿勢の安定に深くかかわっている。 ③ 鳥類では、小脳がよく発達していると共に、この 大脳基底核が運動の最高中枢として働いている。 大脳基底核は、運動の”自動安定装置”であり、大脳がそれほど発達していない鳥類が空中での微妙な運動をよくコントロールしている理由であるといわれる。
  さらに、④ 哺乳類になると、後脳から発生した 橋(きょう)が形成され、大脳が大きく発達し、高等な哺乳類になると、学習や行動、知的判断などを担う 大脳皮質(旧皮質、古皮質、新皮質)が発達する。

  ヒトの脳も、発生の初期には、ホヤの幼生と同じ ”神経管”から始まる。 ヒトの脳は、妊娠30日程度で、脳の原型となる”原基”がほぼできあがる。細胞分裂を繰り返していくと、外胚葉から”神経板”という細胞の集団が作られ、その内側がくぼんで 一本の”神経管”(直径0.1mm以下)ができあがる。 次に、神経管の前部(大脳へ発達)、中央部、後部(小脳へ発達)がそれぞれ別々に細胞分裂してふくらみ、形が湾曲して、ヒトが二本足で歩行するのに適した形となる。(cf. 魚類では細長いまま) 妊娠50日ほどになると、前脳の細胞分裂が活発になり、左右一対の大脳半球が形作られる。 妊娠70日頃には、大脳皮質のシワや溝ができ、妊娠9ヶ月には、大人の脳とほぼ同じ原型ができあがり、最終的には、脳全体で千数百個以上大脳皮質で 140億個もの神経細胞をもつ巨大な脳が完成する。この数は、ほとんど ヒトの大人の脳細胞の数である。
  (”胎教”もあるが、出生後、神経細胞相互の連関ができあがっていく。 脳の神経細胞は出生後、ほとんど増殖せず、20歳を過ぎると10万個/日減少し、80歳まで生きるとして約22億個が死滅する。しかし、神経細胞相互の連関が出来上がっていくことにより、必ずしも頭が悪くなるというわけではない。また、「可塑性」という機能により、無くなった神経細胞の代替をするように、近くの細胞が働く。)

  

  * それぞれの部分の機能:

  ・ 延髄は、内臓性感覚(味覚)、内臓性運動(消化、咀嚼(そしゃく)、嚥下(えんげ)、酸素の供給)などの生命維持活動をつかさどっている。
  ・ には、中央部に大量の神経繊維が走っていて、大脳と小脳からの情報を連係している。この上部左右には米粒大の”青斑核”があり、これを損傷すると レム睡眠(夢を見る時)が生じなくなるといわれる。
  ・ 中脳には、中央部に神経線維が網状になった”中脳網様体”(・・・・ 網様体は 延髄から中脳まで広がって存在し、呼吸・心拍・血圧を調整する中枢で、生命維持の働きをする)があり、「意識」「覚醒と睡眠の調節」を支える重要な役割をもっている。また、”快感神経(A10神経)”、”不快神経”などの起点であり、痛覚線維、三叉神経、視聴覚・対光反射・眼球運動反射などの中継機能、さらに、なめらかな運動機能をつかさどる”赤核”、”黒質”という部分がある。
  ・ 間脳には、自律神経の中枢である視床下部があり、内蔵の動きを自動コントロールし、脳下垂体からは、各種”神経ホルモン”(副腎皮質刺激ホルモン)や”催乳ホルモン(プロラクチン)”、”黄体ホルモン”、”成長ホルモン”などを分泌する。

  ・ 大脳新皮質”人間脳”)の発達こそ、人間が人間らしくある所以である。ヒトでは、旧皮質、古皮質が内側へ追いやられ、新皮質が大脳半球の大部分を占める。また、「連合野」の領域が広く、5つの連合野はそれぞれの機能を統合する。 前頭連合野は、意欲や意志、言語、判断、創造的な精神活動に深くかかわっている。運動前野(中心溝の前部、運動をつかさどる)、頭頂連合野(中心溝~頭頂後頭溝の間、中心溝の後部は体性感覚をつかさどる)、後頭連合野(視覚認識)、側頭連合野(聴覚、記憶)

  ** 体重に対する 脳の重量比は、知能とあまり関係が無い。 ヒト脳重1375g(成人男子1350~1400g)、体重比率2.44%)、ゴリラ(450g、0.50%)、ゾウ(4660g、0.23%)、ネコ(32g、0.78%)、ネズミ(0.376g、2.78%、カエル(0.095g、0.25%)。 また、脳の”シワ”の数も、知能と関係が無い。(ネズミやウサギの脳にはシワが無いが、イルカにはヒトよりも多くのシワがある)
  動物の大脳皮質の神経細胞の数は、ヒト:140億個、ウサギ:13億個、マカク(ニホンザル、カニクイザル、アカゲザルなどの総称):50億個、チンパンジー:80億個。

  (2) ヒトの脳と 心との関連:


  ① 恋愛感情と”ワニの脳”:

  ヒトの大脳辺縁系は、闘争本能や縄張り意識などの”きわめて原始的な無意識”をつかさどる所で、”爬虫類の脳(ワニの脳)”とも呼ばれる。ここでは、恐怖、怒り、好意、嫌悪、愛着、喜び、悲しみなどの、動物でも持っている「情動」(=原始的な感情)を支配し、食欲などが満たされた””、満たされない”不快”も含まれる。 我々ヒトが、人を好きになったり 嫌いになったりする感情も、この”ワニの脳”による。
  ただし、大脳皮質が発達していない”ワニ”などは、敵に対する行動は生まれつきのもので、遺伝子によってプログラミングされた決まりきった行動でしかない。 一方、ヒトは、大脳新皮質のうち、特別重要な働きとして、この「情動」と「思考」とを統合する働きがあり、「心」の創出に大きな役割を果たしている。高度な学習能力により、状況に応じて適切な行動をするように、自らの「意志」でそれらをコントロールすることができるのである。

  この 大脳辺縁系の本能的な働きに基づく「快」、「不快」という価値判断が、動物の行動の基本になっている。この”好き”、”嫌い”の価値判断をしているのが、大脳辺縁系の中の「扁桃体」(ヒトで長さ15mmのアーモンド(扁桃)形)であり、外敵から身を守るための闘争本能や攻撃行動をつかさどる。
  扁桃体の隣には「海馬」(タツノオトシゴ(海馬)のような形)があり、「記憶」、特に、「短期記憶」(数週間で消えるもの)に深くかかわっている。(海馬を電気的に刺激すると過去の記憶が鮮明に呼び起こされる(フラッシュ・バック)) この海馬と扁桃体は、本能的な欲求をつかさどる視床下部と密接につながっていて、体験した快い感情報酬)が伴うと、もう一度同じ体験をしたいという行動(=報酬行動)をとるようになる。 また、大脳皮質は、記憶(長期)の貯蔵庫であり、知的な喜びや 感情が引き起こすイメージなどが伴うと、一層鮮明に残る

  視床下部には、食欲中枢、性中枢、攻撃中枢などの、動物が生きていくために必要不可欠な中枢が密集している。 この、間脳にある視床下部と、そのすぐ下の脳下垂体が、心拍数や呼吸などをコントロールする「自律神経」の働きに密接に関係しているので、大脳辺縁系によって「情動」が呼び起こされると、内臓にも変化が起きる。(好きな人を目の前にして、赤面し、心臓の鼓動が活発になる、なども)
  視床下部は、”心と体が出会う場所”といわれ、脳と体の働きを、自律神経とホルモンでつなげるパイプとなっている。 人間が何らかの刺激を受けると、視床下部が自律神経に働きかけ、交感神経が興奮し、副腎髄質からアドレナリンが分泌される。(副腎髄質からアドレナリン、ノルアドレナリンが、副腎皮質からステロイドホルモンが、それぞれ分泌地され、両者のバランスによって自律神経の働きが営まれている)

  嫌いな理由を理路整然と説明しようとしても、自身の中に存在する”ワニの脳”が嫌いと言えばどうしようもない。大脳のほうから、”内なるワニ”を「支配する」必要がある。


  ② 快感神経:

  ヒトや動物が、欲求が満たされ、あるいは、欲求が満たされることが分かっている場合、「報酬系」と呼ばれる部分が活性化して、「快」の感覚を与える。 欲求には、喉の乾き・食欲・体温調整欲求などの生物学的欲求の他に、ヒトの場合、他者に誉められること・愛されること・子供の養育など、より高次で社会的・長期的なものまで含まれる。報酬系の働きは、学習や環境への適応において重要な役割を果たしている。
  創造やひらめきを起こす前頭葉は、大脳皮質の33%を占め、人間として生活する上で必要な働きをつかさどっている。 この前頭葉に指令を出すのが脳幹であり、その中央に、3列ずつ左右対称に計40個の神経核が並んでいる。(外側:A列、内側:B列、中間:C列) このうち、外側の A列の下から10番目の神経核が「A10神経」であり、”快感神経”と呼ばれ、脳細胞に快感と覚醒を与えるドーパミンを、大脳に分泌している。(この中脳部分に電極を埋め込んだサルやネズミは、とめどもなくスイッチを押す。サルにオナニーを教えると、(大脳からの自制が利かずに)死ぬまでオナニーをし続けるという)

  A10神経で分泌されたドーパミンは、視床下部(食欲、性欲などの中枢)に入り、扁桃核(攻撃性)、側座核(行動力)、海馬(記憶力)、尾状核(表情・態度)へ進み、最終的に大脳の前頭連合野に入る。この経路が、人間に、喜びや 困難に立ち向かうための やる気を起こさせ、前頭葉の活動が高まり 新しいものを生み出す快感が与えられる。 このA10神経を、GABA(ガンマアミノ酪酸)神経が抑制しているが、これもオピオイド(麻薬のような神経伝達物質)を分泌する。
  前頭葉や辺縁系にドーパミンが過剰に蓄積された状態は、覚せい剤で幻覚や妄想を引き起こす薬物中毒患者や、精神分裂症の脳の状態と似ているといわれる。(ドーパミン過剰症候群: 分裂症だったゴッホやムンクのような天才と紙一重の場合、このタイプと言える。 ただし精神分裂病には、グルタミン酸のレベル低下により、無気力で自閉的になったり、考えがまとまらなくなったり、自分が何を言っているのか分からなくなるなどの症状もある。)
  ただし、あまり喜び 興奮してドーパミンの汁が ドパドパ(?)出過ぎた後は、ドーパミンがノルアドレナリンやアドレナリンという交感神経の伝達物質の前駆体なので、アドレナリンに変わり、怒りや闘争心が掻き立てられ 無意識の内に力み過ぎになって失敗することが多い。


  また、脳下垂体前葉からは、”脳内麻薬”と呼ばれるエンドルフィンが分泌される。これは、ペプチド(たんぱく質)であり、天然の麻薬とは構造が異なるが、脳神経細胞の受容体には同じように結合する。 ”ランナーズ・ハイ”、”瞑想”のように、苦痛に対するフィードバックとして出され、特に βエンドルフィンは苦痛除去の時に最も現れ、モルヒネの6.5倍の鎮痛作用があるとされる。(エンドルフィンの分泌量は少ない) ハツカネズミにコマ回しをさせる実験で、疲れても休ませずにコマ回しをさせたネズミの脳を調べると、エンドルフィンが増えていた。
  ドーパミンとエンドルフィンが同時に分泌されると、人間は非常に恍惚とした状態になるという。A10神経から少量のドーパミンしか分泌されなくても、βエンドルフィンがあれば、ドーパミンが10~20倍も出たのと同じ作用がある。 このエンドルフィンのレベルが下がると、不安を覚えるようになる。

  因みに、この「快感神経」と隣り合って、「不快神経」が存在している。不快神経の情報伝達には、アセチルコリン(タバコのニコチンはアセチルコリンに取って代わる)が関係しているといわれる。


  ③ 頭の回転の速さ:

  脳の中には、神経細胞(ニューロン)と、数の上でその50倍(重量で10倍)の神経膠細胞(グリア細胞)が存在し、突起を伸ばして複雑な回路網をつくりあげている。グリア細胞は神経細胞を固定し、栄養面で神経細胞を支える働きをするが、それ自身も回路網の一部を形成できる。 そして、五感をはじめ、脳から発せられるいろいろな情報は、コラムという それぞれに関連する領域を伝わっていく。一つのコラムには、同じような性質を持つ約1万の神経細胞が集まっていて、脳における情報処理の最小単位を構成している。コラムのどの部分で、分析、処理、統合などが行なわれているかはほとんど解明されていない。 コラムの数が多いので、それを限られた頭蓋骨の中に収めるため、新皮質は深いシワを作って折り畳まれている。

  ここで、いわゆる”頭が良い”、”頭の回転が速い”とは、どういうメカニズムによるのだろうか?

  神経細胞と神経細胞との間には、20万~30万分の1mm(3~5nm)程度の隙間があり、この間をつなぐのがシナプスである。このシナプス間を、各種の神経伝達物質(アセチルコリン、ドーパミン、など数十種)が物質移動する。 神経伝達物質は、神経細胞で生産され、シナプスまで運ばれ そこで一時貯蔵され、次の神経細胞の受容体(レセプター)があり、この伝達物質とレセプターが カギとカギ穴のように適合すると、次の神経細胞に信号が伝わり電気が走る仕組みになっている。 これが、各種の知覚や運動、麻酔や覚せい剤・麻薬などの作用する神経系が限定される理由である。

  一般に、明晰な頭脳の持ち主ほど、1) 神経細胞のネットワークが複雑かつ効率的に張り巡らされ、2) 信号の伝達速度も速い
  伝達速度は、軸索の太さが太いほど、また、髄鞘(ずいしょう、リン脂質の絶縁体)の形成ができているほど、大きくなる。(50cm/秒~120m/秒;各種神経系によって大きく異なる *)

  また、脳波が α(アルファ)波のときを経ると、人は最も能力を発揮しやすい状態になるといわれる。(脳波には、δ、θ、α、β、γ などがあり、 睡眠中の無意識の状態で α波(10サイクル/秒)、 浅い睡眠と深い睡眠を行き来している状態で θ波、 緊張しているときや数学の問題を解いているようなとき、悩んでいるときは γ波(最も速い)が出る。
  何かに集中したり、リラックスしているとき、瞑想して落ち着いて思考している状態でも、脳波は α波になるといわれる。ほとんどの人はただ目を閉じただけで α波になるが、10秒も続かない。そこで、イメージトレーニングでストレスを解消し、精神をリラックスさせる訓練が推奨された。(実際に、学校で実施され、その訓練後はどんな教科も成績が伸びたそうである)
  すなわち、少しでも長い時間 α波にすることができれば、脳は深い休息に入り、抑制状態になり、リフレッシュされ、再び活発に活動するのである。(香りが分かるか分からないか程度のアロマテラピーをロビーや待合室などで行うことも実施されている。)
  ただし、宗教の”難行・苦行”は、大脳内にエンドルフィンを分泌させ”快楽”を得させて、宗教的な洗脳やマインドコントロール、催眠術などを受け入れさせることができるが、脳に極度のストレスを与え、精神障害を受けたり、教祖の妄想に巻き込まれたりし、ヒステリー状態からの集団自殺や反社会的な行動もすることもある。また、その宗教から離れた後は、後遺症として、集中力が無くなり、恐怖に襲われることが多い。

  * 脳波の周波数: δ:1~3Hz(ノンレム睡眠・熟睡時)、 θ:4~7Hz、 α:8~13Hz(レム睡眠、閉眼・安静の覚醒した状態)、 β:14~30Hz(能動的で活発な思考や集中)、 γ:30~64Hz(同期的で協奏的な認知活動、新しい洞察の認知)、 その他、 ω:64~128Hz、 ρ:128~512Hz、 σ:512~1024Hz、 また、振幅は、正常人で20~70μV


  ④ 脳への”栄養”:

  脳のエネルギー源になっているのは、ほとんどがブドウ糖であり、肝臓と腎臓から供給されるが、約8時間分しか貯蔵されていない。したがって、食事によって血中のブドウ糖が増えれば、脳の中では FGF(線維芽細胞増殖因子)が急増し、そのうちの酸性のFGFは 脳を活性化させ、記憶力を高める働きがある。 このFGF量は食後30分~3時間が最も多く、食後2時間くらいが FGFが海馬に取り込まれる時間帯である。 したがって、その時間帯に学習すれば、最も効率よく勉強できる。
  さらに、食事の効果として、十二指腸からコレストキニンというホルモンが分泌され、肝臓の門脈(肝静脈)の末端から迷走神経(内臓に広く分布し、知覚、運動、分泌をつかさどる)を刺激し、視床下部から海馬に入り その働きを活性化する。
  逆に、食事を採らないと、血糖値が下がり、(通常の食欲がある場合、)食欲と攻撃性の中枢が辺縁系で隣り合っているので、いらいらしたり攻撃性が増したりする。これは、ハングリー精神として、肯定的に用いられる。(ボクサーの試合前の減量は、この攻撃性を相手に向けるのに役立っている。) しかし、いじめや口論、時には、暴力犯罪の原因にもなり得る。過激なダイエットとして食事を採らないのは考えものである。
  脳の活性化には、1日3回の食事(特に、朝食)を腹8分目にとることが重要となる。 食べ過ぎは、高濃度のブドウ糖が血中や 脳脊髄液中に含まれるため、脳を活性化しても、記憶力を高めるFGFの生産が追いつかなくなり、記憶力や学習能力が低下する。 また、(食事の量に関係なく)食事をとった直後は、血中にブドウ糖と共に インシュリンの量が増え、視床下部の「満腹中枢」を刺激するが、そのすぐ近くにある「睡眠中枢」をも刺激してしまい、眠気を催すことになる。食べ過ぎなければ、食後30分程度で眠気は消える。

  (参) 断食祈祷(水断食)などでは、最初の1日目がつらいが、その後はむしろリラックスしてくる。断食が明けると、体が栄養面で充分休息し、その後、脳や体のいろいろな機能が断食前よりも癒され、活性化してくる。



  * 神経伝達物質と神経系:

  神経伝達物質は、シナプスで情報伝達を介在する物質で、シナプス前細胞で合成、あるいは、外部から吸収され、シナプス終末にあるシナプス小胞に蓄えられ、そこへ活動電位が到達するとシナプス間隙に放出される。これは、後シナプス細胞の細胞膜上にある受容体と結びつき、イオンチャンネルを開かせ後シナプス細胞に脱分極、または、過分極を起こさせる。
  神経伝達物質は、体内で合成されるものの他に、医薬品や麻薬・覚せい剤、多くの毒物などもそれぞれの受容体と結びついて作用する。
  (↓ 体内合成される 代表的な神経伝達物質)
  

  分類 神経伝達物質 前駆物質      起源組織 作用神経系              作用
モノアミン類ドーパミン チロシン 
  → Lドーパ
   大脳基底核、中脳 中枢神経運動調節、ホルモン調節、快の感情、意欲、学習
ただし、過剰分泌は 統合失調症
ノルアドレナリン ドーパミン  副腎髄質から血中へ 交感神経闘争・逃避反応、心拍数増加、脂肪からエネルギー、筋肉増強
アドレナリン ドーパミン  副腎髄質から血中へ 交感神経闘争・逃避反応、心拍数増加、脂肪からエネルギー、筋肉増強
セロトニン トリプトファン 視床下部、大脳基底核、延髄 中枢神経日常生活から精神疾患(うつ、神経症)に影響、過剰では偏頭痛、
メラトニン(睡眠導入物質)へ転換
アセチルコリン  コリン 副交感神経・運動神経の末端 副交感神経骨格筋・心筋を収縮、脈拍を遅くする、唾液を分泌
ヒスタミン ヒスチジン(音や光などの外部刺激および情動、
空腹、体温上昇などの内部刺激
により放出
 中枢神経/
血管内皮細胞など
血圧降下、血管透過性亢進、平滑筋収縮、血管拡張、腺分泌促進
アレルギー・炎症の発現介在物質

覚醒状態の維持、食行動の抑制、記憶学習能の修飾
アミノ酸グルタミン酸 中枢神経学習、記憶、 嗜好と感情をコントロール
γ-アミノ酪酸(GABA)脳内グルタミン酸   海馬、小脳、脊髄 中枢神経抑制系の反応、GABA受容体に 鎮静、抗痙攣、抗不安作用
アスパラギン酸グルタミン酸
グリシン抑制系の反応
ペプチド類バソプレシン脳下垂体後葉 → 腎臓V2受容体へ抗利尿、血圧上昇
ソマトスタチン脳下垂体、膵臓(ランゲルハンス島)成長ホルモン・インスリン・胃液などの抑制
ガストリン   胃の幽門前庭部胃液・ペプシノゲン、インスリン分泌促進
副腎皮質刺激ホルモン    視床下部 副交感神経副腎皮質ホルモンの分泌促進
エンドルフィン 脳内報酬系(視床下部、弓状体) 中枢神経内在性鎮痛系に作用、多幸感



   6. 脳・神経のメカニズム(2)



  (3) 脳細胞の個数のチェック:


  1) 大脳皮質全体の比較:

  大脳皮質の細胞数140億個=14G個、 これに対して、たとえば DVDは 5-9GB/枚。普及している庶民的なパソコンのHDDの容量は1000GB(=1TB)前後。 したがって、大脳皮質の細胞数は機能の割に少なすぎる! 脳細胞の”回路”といっても、トランジスターによる回路とは異なり、細胞1個1個が、多くのトランジスターで構成された論理回路に匹敵することになる。
  つまり、1個の脳細胞が、複数の情報を認識して処理し「たましい」が脳細胞や コラム(それぞれの情報が関連する領域)に”重畳”しているようである! これは、脳や体に「意識」があるか無いかの程度によって、その”重畳”の程度が異なっているように見える。


  2) 視覚野の比較:

  ここで、視覚について、脳の情報伝達・処理 機能を、機械類と比較チェックしてみる。

  光受容細胞は(ヒトの場合)1億個以上存在し、錐体(円錐体・明るい光用)は網膜の中心部で密に分布し、桿体(円柱体・暗い光用)は周辺部に多く分布する。これは固体撮像素子(CCDなど)200万~600万画素よりも圧倒的に多い。網膜の細胞はサンプリングで光の情報を受け、神経節細胞の軸索は片眼で100万本程度であり、束になって眼球を出て間脳の腹側を経て、大脳の後頭葉へ送る。(眼球から出た直後、半分の軸索が左右に交差する) 撮像素子は1本の信号線で高速で処理するのに対し、視覚は100万本同時に(神経伝達速度で)処理して、その全体が「視覚認識」となる。

  網膜からの神経信号は、まず 後頭葉の第一視覚野(17野・V1)から入って認知され、① 頭頂葉へ向かう背側皮質視覚路と、② 側頭葉の下方へ向かう腹側皮質視覚路との 2つの視覚路を通って、次第に高次な情報処理が行なわれていくことが知られている。
  後頭葉の第一視覚野(V1)では、ごく初歩的な形状認識(静止、または運動する対象に関する情報の処理、パターン認識)であるのに対し、背側皮質視覚路では その視覚がどのような空間配置を取り、どこへ行くか(Where経路; 運動、物体の位置や、眼や腕の制御、到達運動に関連)、また、腹側皮質視覚路では 記憶にかかわって何が視覚として認識されたか(What経路; 認識や形状の表象(意識にのぼる映像)、長期記憶の貯蔵と関連)、という、より高度に連合された、しかも このように2つに明確に分けられた情報形態に 瞬時に発展する。 この情報は最終的には前頭葉まで伝わるといわれ、”What”、”Where”が、言語や論理という知的に構成された高度な情報にまで発展する。

  ・・・・ 脳の、大体この辺が、各段階で処理された「視覚」であると「認識」しているのであり、「知覚・認識」するのは、脳に重畳している「たましい」の領域である。

   


  3) 細胞一個一個の情報処理機能:

  よく研究された V1領域の一個一個の細胞に微細な電極を埋め込んで発火実験(その細胞の膜電位が逆転し、興奮しているかどうかを調べる)では、サルやネコに見せた それぞれの形状に対する反応が、それぞれの細胞によって特化されていることが分かった。 さらに、サルの大脳・側頭葉寄りの下側頭回には、図形(+、-、l、などの単純な図形)に個別的に反応するニューロンが存在し、それらの細胞 が組み合わさって、より複雑な図形を識別する細胞が構成される、というような情報処理プロセスがこの領域にあると考えられている。つまり、細胞レベ ルで、すでに 反応する基本図形が決まっているらしい。(+ に反応するが、○、×、△には反応しないニューロンなど)

  また、ネコの聴覚についても、特定の周波数領域の純音(時報のピー音)、ネコの威嚇の「シュー」という音、コオロギの「リンリン」音、など、様々な音 に特異的に反応するニューロンが見つかっている。
  それらの知見などから、音楽の認識としては、大まかに以下のように推定することができる。
   ①各周波数、各音量の純音に特異的に反応するニューロンがある。
   ②次第に大きくなる音、小さくなる音などを識別するニューロンがある。
   ③いろいろな「音色」(楽器の音色を含めて)に特異的に反応するニューロンがある。
   ④以上のそして、その他の様々なニューロンの組み合わせ、さらに、時間的な音声記憶の流れなどで、音・音楽を認識している。

  したがって、細胞一個一個が、トランジスターで構成される回路セットに相当し、少ない個数でも多くの機能を果たしているということになる。そして、細胞一個一個の間を「たましい」の「意識」が走り回っていると解釈できる。

   ・・・・・・ まさに、”人間万事塞翁が馬”が転じて、”にんじん好きは 細胞が馬”

  * 低次の処理機能に特化されたサルの動体視力は、ヒトの10倍といわれる




  (4) コンピューターに意識は芽生えるか?


  システムが複雑でありさえすれば、それに「生命」が宿るのであろうか?

  高速かつ正確無比に情報を処理するコンピューターについては、しばしばSF小説などによってその将来の極端な姿が想像されてきた。たとえば、

  ・ 万能マシンのアナロジー:

  一定の公理と推論形式に基づいて、すべての数学的真理を証明可能にする数学システム ・・ ”数学的万能マシン” ・・ が完成した。このマシンは、証明可能命題を順番に組み合わせて新しい定理を証明し、次にそれらの定理を組み合わせて新しい定理を証明するといったような規 則的な方法で、全ての”真理”を証明し続けた。全ての数学の問題は、待っているだけで必ず解けるのである。
  数学者に続いて、物理学者たちは、ついに、一般相対性理論と量子力学の統一理論を発見し、あらゆる法則を25の命題にまとめた。これらの法則もこの万 能マシンに組み込まれ、さらに、生物学、心理学、社会学などの理論も統一化され、”科学的万能マシン”が完成した。宇宙の正確な年代、エネルギーの効率的 生成、人口問題や食糧問題にも、全てこのマシンが計算し正確に答えることができる。この時点で、”科学的万能マシン”は、全地球上にネットワークを張り巡 らし、経済予想から気象情報までのあらゆる情報を処理した。
  さらに、文学や絵画や音楽の芸術性に共通する法則が発見され、完全な美学システムが構成された。このシステムも科学的万能マシンに組み込まれ、つい に、”普遍的万能マシン”が完成したのである。
  もはや人間は何もする必要が無くなり、何かを知りたければ、聞くよりも早く万能マシンが答えた。なぜなら、このマシンは、すべての人間の行動を正確に 予想できるからである。マシンに敵対することはもちろん不可能である。全ての人間の考えていることも予測され、マシンが未然に防いだからである。”普遍的 万能マシン”は、地球を完全に制御し、全ての問いに答え、芸術作品を生んだ。もはや人間に残されているのはスポーツだけだった。(by. ルドルフ・ラッカー、数学者)
  ところが、この”万能マシン”は、ある日いっさいの問いかけに応じなくなった。すべての事についてこの万能マシンに依存する地球上は大混乱に陥った。 多くの技術者がマシンを隅から隅まで調べたが故障箇所は全く無い。あまりにも複雑なシステムなので、精神科医が治療に当たるが、それでも返答しない。そこ に一人の技術者が来て、あることを言った。すると、途端に全システムが起動し、”万能マシン”は正常に戻ったのである。 ・・・ その言葉は、”PLEASE”だった。。。(by. アイザック・アシモフ、SF作家・ユダヤ人)


  しかしながら、ゲーデルの不完全性定理は、このような”万能システム”が論理的に不可能で あることを証明している。”神”のような、無矛盾、かつ、完全な、理想的なコンピュータは存在しないのである。自然数論のシステムが完全ではない ことが証明されているので、それを含む数学システム全体やアルゴリズムも不完全である。この意味で、不完全性定理は、我々にとって、永遠に謎が尽きることがないことを保証したといえる。
  (* ♪コンピューターに守られたバベルの塔は不完全・・・)

       ・・・・・ システムに「いのち」を宿らせることは、「創造主」「主権」による。




  (5) 人の大脳の特異性:


  人間には有って、他の動物には無いものとは何だろうか?(尻尾じゃないよ)

  脳内の神経伝達物質には、ごく少量分泌される ドーパミンがあるが、それよりも大脳皮質全体やその下部に広く分布する グルタミン酸のほうがはるかに多い。このグルタミン酸は、学習や記憶を高め、嗜好や感情をコントロールする。 この グルタミン酸の神経系での活動が低下することにより、精神障害を引き起こすといわれる。 (ただし、グルタミン酸は血液脳関門を通過できず、現在のところ 治療のため脳にグルタミン酸を注入する方法は判明していない)

  特に、精神分裂症の前駆症状として、まわりで今までとは違った何か普通でないことが起きているような気がする(妄想気分)、それを言葉で表現できない(言語危機)、なんとなく頭が重い、周りの本来無関係な人たちが自分のうわさをしたり、自分に関係があるように思え、そのうち声が聞こえてきたりする。(関係妄想) 精神分裂症の幻覚は、声が聞こえてくるのが特徴である。(幻聴) また、自分の頭の中から考えが引き抜かれたり(思考奪取)、他人の考えが自分の頭の中に入ってくる感じ(思考吹聴)、自分の考えが他人に分かってしまう感じ(思考察知)、自分の考えが周りに放送されている感じ(思考伝播)、自分が他人に操られている感じ(させられ体験)などがある。


  この、精神分裂症患者の脳の変化は、 1) 意識が低下し、自分のすべきことが分からなくなる; 前頭葉(能動的な働きの中枢)の働きの低下、 2) 幻覚・妄想; 右の前頭葉、または、左の側頭葉の働きの低下、によるとされる。
  精神分裂症(慢性期の)によってグルタミン酸の活動が低下する領域(by.横浜市大、精神医、岸本教授)は、ブロードマンの脳地図では、

  ・ 前頭葉の10野(前頭極・額のあたり);  未来についての事柄、予測、計画
  ・       11野
(眼窩前頭皮質・眼球の上の回り込んだ皮質部);  意思決定の認知処理
  ・ 側頭葉の38野
(側頭極・側頭葉の先端部);  言葉の意味記憶、顔の見分け、他者の心を推察
  ・ 頭頂葉の40野(縁上回・頂頭葉の後角部);  (信仰?) ・・・ ただし、頭頂葉の機能は未だよく知られていない。体性感覚(1、2、3野)、空間認識以外の領域として”信仰”を挙げた

  これらの分裂症に侵されやすい部分は、ヒトのみに存在し、サルの脳にはほとんど無い部分(by.「POPな脳科学」p199)であり、創造時に、ヒトの脳が発達して重量が増した部分と等しい。


   ・・・・・・ 人は「霊的」な生き物。 この 大脳皮質の”霊的アンテナ部分”は、本来、聖霊様によって、神様と交わる部分だった所である。 神様との交わりが途絶えたのは、人が罪を犯し、神様から独立して自分で善悪を規定しようという”原罪の性質”を持ったからである。 分裂症は、”別人格”を現わす”悪霊”による場合が多い。 これとは正反対に、人の脳は、本当の神様の霊である「聖霊様」に、これらの部分から満たされ得ることも意味している。

  「霊的」なことに関与するこの部分は、それぞれ「神様」の特性の重要な部分と一致する。すなわち、

  ・ 「永遠」についての概念の理解、未来の啓示=「預言」、「時間を超越」する理解
  ・ 「意志」の分野を神様にゆだねる=「異言」、「聖霊のバプテスマ」
  ・ 「ことばの神」、「コミュニケーション」、「愛とあわれみ」
  ・ (「神の信仰」を持つ、「礼拝」

  これが、人間だけが持ち、他の動物には無い特性であり、「神がご自身に似たものとして 人を造られ」(創世記1:26)、堕罪以前のアダムとエバが 神様と交わる方法を持っていたことのあかしである。

 1. 生物体の素材の起源



  (1) 必須微量元素の起源:


  生物体に必須元素は、水素(H)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、リン(P)、硫黄(S)、塩素(Cl)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、の他に、
  微量元素(必須)として、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、砒素(As、原子番号33)、セレン(Se、34)、モリブデン(Mo、42)、ヨウ素(I 、53)がある。
  このうち、鉄(Fe、原子番号26)やその直後の原子番号の Co(27)、Cu(29)、Zn(30)を除いて、鉄よりも原子番号が大きい AsSe(過酸化脂質分解酵素の働きを活性化する酵素)、Mo(代謝、造血)、 (甲状腺ホルモン)が、人間や動物にとって必須元素となっている。
  (現在の宇宙論によると、)ビッグバン宇宙がはじめに大きく膨張してすぐに急速に冷えたので、ほとんど水素のみが生成し、ヘリウムから鉄までの軽元素は、水素が集まってできた星の燃焼反応で生成した、と考えられている。 そして、これらの 鉄よりも原子番号が大きい重元素は、超新星爆発によって大量に放出される中性子を 鉄核、ニッケル核などが吸収してできる生成物であるから、”宇宙進化論”で考えるならば、生物が初めて登場したのは、太陽系などが形成され、その近傍での超新星爆発が完全に収まってからになる。

   ((参照) → 宇宙と地殻の元素の起源について:(下のコラム) )


  ところが、今年の5/10に発表されたばかりの、最も遠い銀河団96億光年 ・・・ 近赤外線望遠鏡で ハッブル効果による赤方偏移より推定・”赤い銀河”、東大)では、新しい星の誕生はほとんど無く (96億年前のはずなのに)すでに成長が止まっている観測結果だった。 ”ビッグバン理論”によると、宇宙の年齢は、宇宙の膨張から逆算して ハッブル定数の逆数: H0-1 ≒ 138億年 と推定され、差し引き、42億年以下の期間で ”ビッグバン”から宇宙が完全に冷え、初期の星の超新星爆発などがすべて終わり、ちりがほとんど宇宙空間から星に集まり、重元素が充分に混錬されなければならない事になる。(* 因みに、太陽の年齢46億年、地球の年齢45億年とされ、長くてもこの期間以内で、生物の”誕生”と”進化”が”自然発生的に”起こったことになっている。)

  一方、地球から非常に遠い天体には クエーサー(QSO(準恒星状天体)、活動銀河の核といわれる、赤方偏移 0.06~6.4、8億~180億(?)光年、銀河の100倍のエネルギーを放出し銀河の初期の姿とされる、中心に巨大ブラックホールがあるといわれる)がある。 このクエーサーがヘリウムよりも重い元素を含むことが知られているので、ビッグバンの後に最初のクエーサーが生まれるまでの間に、銀河が恒星を大規模に生み出す期間があったのではないかと言われてきたが、このような第1世代の星(超新星爆発するものを含む)が存在した証拠は 未だ発見されていない。(2004年現在) このため、最近では、宇宙学者の間でも、”ビッグバン”による初期宇宙のシナリオは大きく修正を迫られるかもしれない、と言われている。
  ( → クエーサーと初期宇宙の下 )
  (* クエーサーは、遠くにあるのではなく、 ブラックホールの重力場でスペクトルが赤方偏移しているのではないか、とも思われる(?))


  このように、いわゆる”ビッグバン説”による、鉄以降の重元素が生成して 地球に飛来し、地殻に広く混錬しうる期間は、せいぜい数億年と 非常に短い。(誤差を考えると、その期間はほとんど無い)
  これに加えて、超新星爆発の残骸について、予測では5000個以上ある第3ステージ(爆発から12万~100万年)の残骸は一つも発見されていないという観測結果がある。(「失われた残骸のミステリー」) すなわち、宇宙は非常に”若く”、重元素が出来てからせいぜい12万年以内であることになる。



  (2) L-アミノ酸の起源:


  価の炭素原子に個とも互いに異なる原子や原子団が結合しているとき、この炭素原子を不斉(ふせい)炭素という。 不斉炭素原子をもつ分子を、それを鏡面に映した形の分子と重ね合わせることができず、互いに立体異性体の一つとなり、光学的性質だけが異なることから「光学異性体」と呼ばれている。 この光学異性体のうち、偏光の振動面を 時計回りに回転させるものを”右旋性(+)”、反時計回りに回転させるものは”左旋性(-)”という。
  一方、D、L-の「鏡像異性体(エナンチオマー)」は、光学異性体と無関係に定められている。 D-グリセルアルデヒドから導かれる光学異性体を D型 と定義。アミノ酸の場合は、L-乳酸の-OHを -NH3に置き換えて決める。
  (昔から良く知られているが、)生物体のたんぱく質を構成するアミノ酸は、ほとんどが L型で、旋光性は 右、左のものが存在するが、必ずそのどちらか一方になっている。糖ではD型が主流。(栄養価、薬の効果などの違いとともに、アミノ酸を味わうと、D と L では味が違う。 D型アミノ酸を利用する生物もわずかに存在するが、その鏡像異性を転換する酵素を持っている。)
  また、たんぱく質α-ヘリックスのらせん構造は、型アミノ酸による二次構造であり、もし この中 に D型アミノ酸が混入すると、規則的ならせん構造はできず、正常な生理活動ができなくなる。
  アミノ酸やたんぱく質は、加熱等により変成して、不可逆的に”ラセミ体”になり、元に戻らない。(1952年の ユーレイとミュラーによる還元性大気から放電によってアミノ酸が生成した実験は、50%のラセミ体(混合エントロピー最大)の状態で、生物体の原料とはなり得ないものだった。現在、これを生命体の起源として支持する学者はいない。)
  したがって、”進化論”で考えるならば、まず100%純粋な 型アミノ酸が初めに原材料として存在していなければならない。(* もちろん、”原料”だけあっても、それを設計図どおり組み立てるところが絶対的に不可能であるが!)


  今年(2010年)の4/6、アミノ酸が生成する時 その旋光性を一方に偏らせる働きがある”円偏光”が、オリオン大星雲(1500光年)の中心部に 太陽系の400倍という広い範囲で照らしていることが報告され(by. 国立天文台などの国際チーム、近赤外線望遠鏡(南アフリカ))、 この左旋性アミノ酸が隕石に付着して地球に届いたのではないかと言われた。 しかし、地球上の生物体は、L型であるが、右旋性、左旋性は両方どちらかのアミノ酸によって構成されているから、旋光性が一方のみに偏ったアミノ酸があっても意味が無い ・・・ 報道では、”旋光性”と”D、L型”をごっちゃにしているだけ!

  * 因みに、グリシン(H2N・CH2・COOH)は不斉炭素をもたないので旋光性もD、L異性体も無い、 (+)-L-アラニン((+)- L - CH3H・(COOH)・NH2)、 (+)- L -グルタミン酸((+)- L - HOOC・(CH22H・(NH2)・COOH)、 (-)- L -フェニルアラニン((-)- L -C65・CH2H・(NH2)・COOH)、など  ・・・ 太字 C が不斉炭素


  マーチソン隕石(炭素コンドライト、1969、オーストラリア)に見つけられたアミノ酸の ee (鏡像体過剰率)はせいぜい 1~2% にすぎない。実験室で円偏光を用いた光解離実験が行なわれているがその結果得られる ee はせいぜい数%以下 (最大 10% 程度)であり、しかも分解反応であるのでアミノ酸の量もごくわずかにならない限り意味のある ee はあらわれない。そのため現在の生体分子で示されるような 100% ee に近いホモキラリティー(鏡像異性体の一方への偏り)を得るためには、不斉増幅(不斉触媒を用いて不斉合成を行ったとき、生成物の ee が触媒の ee を上回る現象)が必要である。 小城らの研究では L体が優勢になるか D体が優勢になるかはどちらが先に結晶化するかという偶然で決まるとされており、L-アミノ酸の優勢は偶然に起きたと言うことになる。 なぜ すべてのアミノ酸(グリシンを除いた19種)についてもそうなるのかは、充分な説明が与えられていない。(1/219=1/520000の確率)

  したがって、現在も、”進化論”、”宇宙論”から見て、この自然界の -アミノ酸の起源は 依然としてとされている。 100%ホモキラリティーのアミノ酸が生物体を構成しているという事実は、「神様」が生物を「創造」された事の”しるし”である。



  (3) 炭素という元素の特異性:


  有機化合物は、いくつかの無機炭素化合物(CO2、CO、HCN など)を除いて、生物体に関与する一群の炭素化合物として、伝統的に この名で呼ばれている。
  現在118種の元素(同位体はもっと多い)の中で、炭素(C、 原子番号6、 12C(98.9%)、13C(1.1%)、14C(1.2×10-12))のみが唯一無限の多様性をもつ物質を作る材料になりうる。それは、炭素が、 -C-C-、-C-O-、-C-N- などの連鎖を任意の数だけ繰り返して共有結合できる唯一の元素だからである。 生体を構成する たんぱく質、核酸、糖、脂質もすべて炭素化合物である。

  * 同じ 14族(旧 ⅣB族)の ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)なども 4本の結合手を持ち、有機ケイ素化合物の一群が知られているが、その種類は炭素有機化合物の比ではない。
  有機ケイ素化合物は、有機シラン系(C-Si結合)、シロキシド系(Si-O)、シリルヒドリド系(Si-H)などが実用化されている。(シラン: SiH4、 テトラメチルシラン: Si(CH3)、 シリコンオイル・シリコン樹脂: シラン類を加水分解して作られる シラノール(R3Si(OH))を脱水・縮合したポリマーで、シロキシド結合が主骨格の高分子化合物(-Si(-R1、-R2)-O-)で化学的に安定、 2重結合や3重結合をもつ有機ケイ素化合物(Si=C、Si≡Si)も知られているが非常に不安定)
  現在まで、SFの”ケイ素生物”のように、生体物質中でケイ素化合物が生化学的に代謝され、用いられている例は発見されていない。(珪藻のように、珪酸(SiO2)を無機物質のまま物理的に利用する生物は存在する)

  炭素の共有結合は、荷電子が 原子軌道から 分子軌道へ遷移することで形成され、その結合は非常に強く、安定である。(他の結合として、イオン結合、金属結合、水素結合、ファンデルワールス力 などがある) この共有結合のうち、単結合(-C-C-、-C-O-、-C-N- など)は σ結合のみが担い、 2重結合などの多重結合(-C=C-、-C≡C-、)や 芳香族(ベンゼン環など)や複素環式化合物(フラン環、ピリジン環など)の結合は 1個のσ結合と 1~2個のπ結合が担う。 π結合の結合エンタルピー(= 結合の強さの目安)は、σ結合よりも小さい。( ex) エタンの水素が1個取れる反応: CH3CH2-H → CH3CH2 + H、 ⊿H = D = 101.1kcal/mol) ダイヤモンドの硬さや フラーレンC60、カーボンナノチューブの丈夫な構造は σ結合、グラファイト(黒鉛)の滑りやすさは面と面との間の π結合による。(cf. ケイ素はグラファイト構造をもたない) σ結合は結合軸で自由回転できるが、π結合は立体配座に固定され 分子は独特の形となる。

  ( cf. 水素結合はもっぱら、陰性原子上で電気的に弱い陽性 (δ+) を帯びた水素(Hδ+)が、周囲の電気的に陰性な原子(水の酸素、OH基の O など)との間に引き起こす静電的な力として説明される。 これは、生体高分子において水素結合は、たんぱく質が2次以上の高次構造を形成する際、また、DNA(核酸)の塩基同士が相補的に結びついて2重螺旋構造を形成するときに必要な、重要な駆動力となっている。)


  ここで、中性子の質量が、現在の値(1.6749×10-24g )と異なる場合を想定して、星による元素生成を考えてみる。
  ① 中性子の質量が0.1%軽い場合: 星における核融合反応が起こるための重力が小さくなり、原子核の生成が、せいぜい”ヘリウム反応”によってで きるヘリウムからホウ素あたりまでになり、次の”炭素反応”が起こらず、炭素(C、原子番号6)以降の原子核(C、N、O、F、などすべて)が生成 できなくなる
  ② 逆に、0.1%重い場合: 核子が重力によって集まると、瞬時に潰れて、星の質量によって中性子星かブラックホールになってしまう。
  星が炭素原子核を生成できる許容範囲は、電子の質量では1%以内、核力の”強い力”で2%、”弱い力”で 数%であり、重力定数G、光速 c、電磁気的定数(真空の誘電率ε0、真空の透磁率μ0) なども、わずかに違うと炭素原子核ができなくなってしまうことが見積もられている。 (温度が下がると、炭素原子核は自動的に電子を”着て”、炭素原子になる。)

  したがって、「神様」が、生物体のために、「炭素」という最高の材料を、非常にデリケートな条件で”設計”されたことが分かるのである。神様が、”炭素”を作るために、他のいろいろな物理定数を定めた感じがする。



  (参考)
  * 白亜紀と第三紀の境界の地層中に大量のイリジウムを含んだ層があり、これをK-T境界線と呼ぶ。隕石が地上の鉱物よりもイリジウムを多く含有していること から、K-T境界線ができ、恐竜の絶滅が巨大隕石によると考えられている。(イタリア、デンマーク、アメリカ、日本等世界各地に分布)
  しかし、白亜紀と第三紀の境界とは、先カンブリア紀よりも上の層だから、「ノアの洪水」の真っ最中の出来事である。 隕石が直接、大洪水の原因になったのではないと思われるが、同時期の大洪水中に、石灰分を含む生物のいた海底が隆起して、海底に降り積もったイリジウムがその層の上に固定されたと考えられる。(1991年にユカタン半島北西部端チクシュルーブで、落下により直径100km以上、深さ15~25kmの大クレーター、及び、円形の磁気異常と重力異常構造が確認された。)

 2. DNA転写のメカニズム(1)




  DNAの存在こそ「(物質としての)生命体」の特徴であり、生物の生物たる所以は DNAを持っていることである。 DNA → RNA → たんぱく質 の流れを”セントラル・ドグマ”と呼ぶ。 (* DNAなどの情報源をもたないコアセルベート等は、現在ではもはや、進化論者によっても、最初の細胞となったとは考えられていない)


  (1) DNAについて:


  細胞からフェノール、アルコールを溶媒として遠心分離によって取り出されたDNAは、水和している状態では”とろろ昆布”のようで、乾燥させるとフェルトのようになる。
  DNA(ディオキシ・リボ核酸)はRNA(リボ核酸)よりも化学的に安定で、さらに水素結合で2本鎖になることによって細胞内できわめて安定である。 (ごく一部の例外を除いて)すべての生物で、2本鎖DNAは、右螺旋構造 (直径20Åほどの螺旋 ・・・ 時計回りに回転して下のほうに降りていく螺旋階段)であり、10~11塩基で1周する。(* 異性体の左螺旋DNAも想定できるが、各種の酵素と反応しないため、生命体とはならない。これは、アミノ酸の「L-鏡像異性体」と同様に、生命体の「しるし」となっている。)

  よく研究された 大腸菌のゲノム・サイズは 4.8Mbp(480万bp、base pair、塩基対)。 ヒトでは 約3Gbp(30億bp)であり、その長さは、直線にすると約1mで、体の全細胞(60兆個)にあるDNAをすべてつなげると 太陽系の直径(60兆m)ほどにもなる。その内、遺伝子部分は 約5万箇所で、全体の4-5%であり、他の95%以上は意味を持たない部分(”がらくた(junk)遺伝子”)である。 ・・・・ この”がらくた遺伝子”は、生物体の中で唯一、無駄が許された、あるいは、余裕のある部分になっている。
  これは、ちょうど、ある設計者が、コンピューターのハードにプログラム余裕をもって書き込んだかのようである。他の、RNA転写、タンパク質合成、代謝などの機械的部分では無駄な部分は一切無い。


  生物を分類すると、1.真核生物(細胞核をもつ; 動物界、植物界、菌界、原生生物界の4つ)、2.真正細菌(バクテリア、狭義の細菌)、3.古細菌、に分類される。

  * ウイルスは、細胞を持たないので非生物に分類されている。 ウイルスは、たんぱく質の殻と その中の核酸(DNA or RNA)で構成され、他の生物の細胞を利用して自己複製・増殖することができる。ウイルス遺伝子には自分の遺伝子(しばしば宿主と大きく異なる)を複製するための酵素の他、宿主細胞に吸着・侵入したり、あるいは宿主の持つ免疫機構から 逃れるための酵素などがコードされている。(大きさ:数10~数100nm、遺伝子数:3~100個しかない)
   ・・・・ インフルエンザやエイズのように、宿主にとって否定的な作用の場合が多く、”敵”が蒔いた”毒麦”か、あるいは、”身から出た錆”(?)


  このうち、古細菌(アーキア、アーキバクテリア)は、DNAのサイズが 1.3~6Mbpであり 細菌よりもやや小さい程度であるが、DNAの近縁性は真正細菌とは離れていて むしろ真核生物に近い。古細菌は、好塩菌、好熱菌、好酸菌など、極限環境に生息するものが多いが、mRNAによるたんぱく質の合成、TCA回路(クエン酸回路)などの中央代謝(酸素呼吸)は真核生物と同じである。(ただし、メタン菌などの嫌気性菌は部分的) バイオマス(生物体の総量)は、真正細菌と合わせて、真核生物の数倍~数十倍に達するといわれている。

  この古細菌のうちの”イグニコックス・ホスピタリス”は 129万7538bp(それでも、遺伝子数 1434個もある)で、すべての独立生物の中で最低数である。さらにその寄生菌では 49万885(遺伝子数 536)。 すなわち、最低限の独立生物体を営むためには、ゲノムサイズが最低130万bpも必要であり、DNA および 細胞組織 の非常に複雑なメカニズムが初めから必要ということになり、このことは進化論では非常に考えにくい事実である。進化途中と推定される中途半端な長さのDNAでは生物にならないのである。
 

  * 毎度お馴染み~♪、”自然発生”によるDNAの生成確率の計算:

  周囲にDNAの材料が隙間無く満ちている条件で考える。

  ・ 最も単純に、それぞれ充分の個数のある n種類の中から、 重複を許して r個取って並べていくやり方の数は、 Π =  通りある。(重複順列) 4種類の塩基(A、T、G、C)の中から一つずつ選んで ヒトの塩基数 30億個まで順番に並べるやり方の総数は、43000000000 通りであり、DNA1分子が必要最小限の結合時間の内に この条件で自然発生的に生成する確率は、この逆数となる。 各分子を1個ずつ(DNA1分子の重量≒10-25g)作ったとすると、その重量の総計は 43000000000 ×10-25g で、電卓による計算では大きすぎてエラーが出た~~

  ・ 次に、進化論にとって最も有利な条件で計算すると、100万塩基対程度のウィルスのDNAが 3兆年(進化論的宇宙の年齢の200倍)の間に、その1個が”自然発生的に”生成する確率は、1/10280(=ほとんど全くの 0)だった。(by. マルセール・ゴレ、情報学者) 因みに、太陽のような星に1個の地球のような惑星があったとして(1000億(銀河系中の恒星の数)の1000億(全宇宙の星雲の数)倍=1022個の地球)、これらのうちのたった一個の惑星にたった1個の最も短いDNAが自然発生する確率は 1/10(280-22)1/10268で やはりほとんど全く の0である。

  ・ もっとレベルを落としてみよう。 たんぱく質のうち比較的簡単なものでも分子量が34000もあり、約340個のアミノ酸が結合したポリペプチドである。このアミノ酸の配列の仕方は1033通りもあり、この各1個ずつの配列の異なる分子の総重量は、10280 g、 すなわち、地球の重さの10253 倍 にもなってしまう。

  ・ 一方、並び方が設計された塩基鎖を人工的に合成することができるのは50塩基程度であり、しかも、100%純粋ではない。これ以上の塩基数になると、合成(反応数、収率、コスト)が指数関数的に困難になっていく。(→ 4.(1) PCR法 のプライマー合成 )




  (2) mRNAの転写と たんぱく質の合成:


  DNAでは、水素結合(60℃以上で切れる)する塩基対が、A(アデニン)-T(チミン)、G(グアニン)-C(シトシン)と決まっている。そのため、核内部における DNA 2本鎖のうち、センス鎖(保存用)は転写に関与せず、もう一つの アンチ・センス鎖(転写用)の、反対の情報を用いて mRNA(メッセンジャーRNA)にコピーされる。

  DNAの暗号は、エクソン(遺伝情報のうち有効な部分)と イントロン(無効な”がらくた遺伝子”の部分)に分けられ、まず、その両方とも mRNAに転写される。
  たとえば、ヒトのABO血液型遺伝子では、7つのエクソンをもつ 約35000塩基が転写され、核内でmRNA自身がその間に含まれるイントロンを編集(切り捨て、エクソン同士を互いに接合)して、結局、有効な情報部分のみのエクソンの連結は約1200塩基となる。(=RNAのスプライジング) 細胞内には外部からのウィルスなどのRNAを破壊する酵素で満ちているので、それらを通過するための”通行手形”として mRNAには CAP(帽子)とポリA鎖(アデニル酸の連結のしっぽ)が付けられ、ここで初めて核の外に出る。


  リボソームにたどり着いた mRNAは、各種アミノ酸を付けた t RNA(トランスファーRNA、これも DNAから転写される)と、その情報の符合が合致するアミノ酸をつなげ、アミノ酸配列であるポリペプチド鎖、すなわち、たんぱく質を合成する。この直鎖タンパクは分子シャペロンにより立体化され、糖鎖やリン酸基で修飾・活性化され、細胞内の各種の膜を通過しそれぞれ特定の場所に移動する。 ABO式血液型遺伝子によるたんぱく質の場合も、ABO血液型特有の糖鎖がここで作られる。
  たんぱく質は、各種のほとんどの生命活動をになうもので、1.酵素、2.細胞の材料、として生体内各所で用いられる。 r RNA((リボソームRNA、これもDNAから転写)は、全RNAの80%を占め、たんぱく質合成に用いられる。

  アミノ酸の種類は20種であるのに対し、これに対応する塩基は、3塩基のコドン(コード=暗号、43=64種)として対応する。(複数のコドンが一つのアミノ酸に対応。・・・* 遺伝暗号表 ↓)
  転写の 開始コドンは ATG(AUG):メチオニン(ただし、このメチオニンは合成後すぐに切り離される)、終止コドンは 3種あり、アミノ酸を指定しないのでここでポリペプチドが切れる。
  このように、3つ組塩基が一つの遺伝暗号を表し、遺伝暗号をだぶって読んだりせず、暗号と暗号の間にスペースなども無く、タンパク質合成の暗号解読は一切無駄が無く厳密に規定されていることが分かった。


  * どのコドンがどのアミノ酸に対応しているかを調べるために、U(ウラシル)のみを多数つなげた人工RNAを大腸菌の中に入れ、フェニルアラニンが多数つながったたんぱく質ができ、フェニルアラニンがUUUによって合成されることが分かった。(1961、ニーレンバーグ、米) また、C(シトシン)とU(ウラシル)が交互につながった人工RNA(UCUCUC・・・)により、ロイシンとセリンが交互につながったたんぱく質ができ、後に、CUCがロイシン、UCUがセリンを決めていたことが分かった。そして、1968年末に、64通りの暗号解読が完了した。(オチョアら、米)

  ** 遺伝子がDNAのどの場所にあるかなどの調査・特定には、mRNAを 逆転写酵素によって c DNA(コンプリメンタリ、相補的DNA)を作ることができ、これは、別途求められたDNAのシーケンスデータ(順序データ)から この特定の遺伝子部分を探すのに用いられる。

  *** DNAからRNAへの転写の詳細を見ると、
非常に”手の込んだ”メカニズムになっている。 ・・・ 「神様」による設計以外の何物でもない!
  転写の開始位置(プロモーター)は、原核生物で”マイナス35領域(TCTTGACAT)という配列が転写開始位置の35塩基対手前に存在する。もう一つは、”プリブナウ・ボックス”(TATAAT)が5~10塩基対手前に現れる。それに加えて、真核生物では、開始位置から何1000塩基も遠いところに”エンハンサー”と呼ばれるDNAがあり、転写速度を決める。 RNAを合成するポリメラーゼの中の σと呼ばれるたんぱく質のサブユニットが開始位置の配列を確認し、σが取り去られ、RNAポリメラーゼがその位置に固定される。 RNAポリメラーゼは、約10個のDNAをほどき、最初の2塩基対との正しいリボヌクレオチドが鋳型に合うと、DNA鋳型沿いに1塩基だけ移動し、進むにつれDNA鎖を開き、合成していく。これらの段階は、20~50ヌクレオチド/秒 という高速で進められていく。
  また、ポリメラーゼの先にDNAがもつれた状態になっている場合、”トポイソメラーゼ”というたんぱく質が、一本の鎖を切断し、未切断のDNA鎖を切断した鎖を通して送り、その後切断部を再縫合する。
  RNAポリメラーゼが、(原核生物の場合)”パリンドローム領域”(AT塩基対に富み 6、7箇所のGC塩基対を含む)という特異的なDNA配列に出会うと、転写が止まる。また、ポリメラーゼをDNAから外すために、ほとんどの場合 ρというたんぱく質が作用する。

  **** 血液型と性格との相関は、あくまで俗説であり、生物発生学的には、造血が 内胚葉起源の組織(胎児で肝臓・脾臓、出生後は骨髄)によるのに対し、性格に関係する脳神経系は外胚葉起源であり、全く異なる。(もし、相関があるとすれば、それは、人種的な差と 血液型の差が たまたま一致して変異したことによると考えられる ・・・ アジア系: B型が多い、等。 日本人は、2大人種(縄文系・弥生系)が混じって構成されているので、多少の相関が出てくるのだろう。)




  (3) いろいろな遺伝子:


  生物体のあらゆる機能は、ソフトウェアとして遺伝子の中のDNAにすべて書き込まれている。この点で、生物体は、「創造主」「ちり」を原料として造られた”生物機械”と見ることができる。

  ① 時計遺伝子:

  生物時計には、太陽の動き(地球の自転)に伴う約24時間の”サーカディアン・リズム(概日リズム)”のほかに、の満ち欠けによる半月周期のリズム、冬眠のように1年周期(地軸の傾き+公転)のリズムなどがある。これらのリズムは(環境によるのではなく)生物に固有で、外界から遮断してもこの時計遺伝子によってこれらのリズムが引き起こされる。
  ショウジョウバエの”ピリオド遺伝子”が故障すると、行動の周期や羽化する時刻がでたらめになる。この遺伝子によって作られるたんぱく質は、生物時計の発振体の主要な成分と考えられている。

  ・・・・・ 天体のリズムと、生物のリズムは、全く別物であるはずなのに、不思議とマッチしている。 これは、宇宙も生物も、それらを造った「創造主」が一つであり、そのように設計したからである。

  ② 行動遺伝子:

  昆虫の行動(本能)は単純でパターン化されているので、行動遺伝子は比較的見つけやすい。(ヒトなどの高等生物の行動は複雑で見つけにくい) ショウジョウバエ(人工的に突然変異を起こしやすい)に突然変異を起こさせ、性行動のパターンに異常を生じさせることができる。(雌に全く興味を示さない”悟り”、雄にも雌にも求愛するが交尾しない”おかま”、かたくなに雄を拒否し続ける雌、など)

  ③ ホメオティック遺伝子:

  ホメオティック遺伝子は、動物の「体節構造」を決め、発生のきっかけを与える重要な遺伝子である。 ショウジョウバエの”アンテナペディア遺伝子”が壊れると、頭の体節の個性が失われ、触覚の代わりに脚が生えてくる。”バイソラックス遺伝子”が壊れると、二本の平均棍(羽が退化した棒状の突起)が羽になり、4枚羽のハエになる。 遺伝子上に一列に並んでいる これらのホメオティック遺伝子群には 共通する塩基配列(ホメオボックス)があり、ヒトやマウスなどの脊椎動物でも見つかっている。たとえば、手足を形成するとき、付け根から先まで各段階に対応して、この遺伝子スイッチが順に働く
  ヒトの場合も、ホメオボックス遺伝子の発現を規制する”転写因子”の突然変異で、1000~2000出生に1例ほどの頻度で、”多指症”という指の本数が5本より多い症例が発生する。(豊臣秀吉も6本指だった)


  ④ 性決定遺伝子:

  男女の産み分けは可能だろうか? 1990年に、Y染色体(ヒトで 5100万bp)上の、性決定遺伝子= SRY(スライ)遺伝子が、胎児の生殖巣から精巣への分化を開始させることが明らかになった。(その後の性分化の過程は 性ホルモン(アンドロゲン)による) さらにマウスXX胚にこの遺伝子を導入する実験が行なわれ、ほぼ正常な雄マウスに性転換した。
  また、成熟雄ラットの神経にもSRY遺伝子が発見され、性ホルモンによらずに脳の性差に影響するという。

  ・・・・・ 「こうして神である主は、人から取ったあばら骨を、ひとりのの女に造り上げ、その女を人のところに連れて来られた。」(創世記2:22)  XY染色体をもつ男のDNAを用いて、XX染色体をもつ女を造ることができるが、その逆はできない。アダム(男)に、エバ(女)のもつ情報がすべて含まれている。


  ⑤ 自殺遺伝子:

  オタマジャクシがカエルに変態するとき、しっぽの細胞が”自殺”するために しっぽが無くなる。しっぽの細胞をそれが死ぬ前に別の場所に移しても死滅する。
  また、ヒトの胎児の手は、発生の過程で、体の両脇から突き出したときは 手のひら全体がうちわのような形をしている。次に、指の骨ができてくると、指と指の間が薄くなり 水かきのようになり、最後に、指と指の間の細胞が”自殺”して 5本の指となる。
  このような、他を生かすために積極的に死ぬ 細胞の自殺現象は”アポトーシス”と呼ばれ、”壊死”(ネクローシス; 血行不良や環境の悪化などによる)と区別される。 アポトーシスの機構は、発生するがん化した細胞や異常な細胞を 常に取り除き、腫瘍の発生を未然に防いでいる。

  ・・・・・ 水かきの例などにより、環境による必要性がDNAに影響を与える、というメカニズムは何も見つかっていない。すなわち、初めからDNAの中に「設計」されている。


  ⑥ がん遺伝子:

  正常な細胞は、数段階のステップを経てがん化する(がんの多段階仮説)。 細胞のがん化には、(1) 増殖能の亢進、(2) 不死化、(3) アポトーシスからの回避、の三段階の変化が生じることが必須であると考えられている。  ・・・ この狡猾なメカニズムには、”悪霊的”な”意思”を感じる。がんは、決して他の細胞を養わず、個体全体が死ぬまで勝手に増殖する。
  がん遺伝子(発がんウイルス、”サーク遺伝子”、”ラス遺伝子”、”ミック遺伝子”など)から作られたたんぱく質は、主に核内で働く。 また、(前段階の)がん遺伝子の多くは正常細胞にも存在し、通常は、細胞内の情報伝達、細胞分裂の制御、細胞の分化や発生などで重要な機能を果たしている。 これらの正常な働きをする”がん遺伝子”が、発がん物質や放射線などによって突然変異を起こすと、異常な働きをするたんぱく質を合成して がん化のステップが昂進する。ウイルスのがん遺伝子は、(”身から出た錆び”的に)ヒトが持っていたがん遺伝子をウイルスが取り込んだもの。
  一方、がんを抑制する遺伝子(p53遺伝子; p53というたんぱく質を作る)も存在し、がん細胞にはこの遺伝子が失われている。


  ⑦ 老化遺伝子:

  人間や動物、植物にも細菌にも、また、正常な細胞にも、すべて”寿命”がある。 真核生物の染色体の末端にある”テロメア”という小粒部分(一本鎖で、DNA配列は哺乳類でTTAGGG の6塩基の繰り返し、長さは ヒトで 10kb。 最近ではテロメアのDNAは強固な4重鎖でG(グアニン)に富むことが分かっている)は、現時点では、細胞の老化が進むならばテロメアが短い、ということは知られているが、その逆は未だ明らかではない。 早老症の一つ ウェルナー症候群の患者や、早死にした クローン羊ドリー(1996-2003、5歳7ヶ月で死亡=人工的に体細胞(ドナーは5歳の雌羊・すでにテロメアが短かった)の核から作られたクローン動物、羊の寿命は通常10~15年)、などのテロメアは短い。

  体細胞組織から取り出した培養細胞には分裂回数に制限(ヒトで 50~70回の分裂まで)があり、それを越えると細胞は増殖を停止する。また、テロメアが一定長より短くなると不可逆的に増殖を止め、細胞分裂が止まる。 染色体の末端では、プライマーがセットできないので 複製が行なわれず、”テロメラーゼ”という酵素がない場合、染色体は複製のたびに、50から200塩基対ずつ短くなる。
  しかし、何度でも分裂し続ける 生殖細胞 と がん細胞では、テロメラーゼが働きテロメア部分を修復する。(がん細胞には大量のテロメラーゼが存在し、がん細胞が不死である理由の一つになっている)  ただし、テロメアの長さは、生殖細胞では長く(ヒトで 15k~20kb)、がん細胞では正常細胞よりも短い。テロメアを欠損することにより姉妹染色体の間で融合が起こり、複製の際に異常染色体の生成が加速され、がん化につながるモデルが提唱されている。

  また、これとは別に、食べすぎ、アルコール、トランス脂肪酸 等によって、食物が分解するとき 酸素フリーラジカル(酸素遊離基)が発生し、DNAやたんぱく質に不可逆的な障害を与え、老化(+血管障害、がん化)を促進する。


  ・・・・・ 1) 人間が「罪(原罪)」を犯した結果「必ず死ぬ」ようになった。(創世記2:17)  さらに、(聖書にある人々の年齢の記述から、)2) ノアの洪水後、人間の寿命は急に短くなった。(アダム~ノアまで900歳台 → セムの600歳~アブラハムの175歳、 by. 地上に降り注ぐ放射線の量が増えたため) ( 注) 「そこで、主は、「わたしの霊は、永久には人のうちにとどまらないであろう。それは人が肉にすぎないからだ。それで人の齢は、百二十年にしよう。」と仰せられた。」(創世記6:3)は、(直訳)洪水まで残された日々が120年、の意)


  * バクテリアのDNAは環状で、端部もテロメアも無い。そのため、バクテリアには寿命が無く、(適した環境と栄養さえあれば)無限に増殖を繰り返す。 (ヒトのDNAも造られたときは”環状”だった?)