夜になったら眠くなって、朝になったら目が覚める…。当たり前に思えるこの睡眠と覚醒のリズムも、きちんとした理由があって、こうなっているのです。睡眠のメカニズムやリズムについて、解説します。

執筆者:坪田 聡

更新日:2009年04月01日

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眠くなるメカニズム

脳の休息
睡眠には、脳と体の疲れを取る、という働きがあります
睡眠中でも、  の機能がすべて止まっているわけではありません。眠らせるが働いているからこそ、私たちは眠ることができるのです。では、どういう仕組みで、眠くなるのでしょうか?

眠気を決める2大要因は、睡眠促進物質 と 体内時計 です。

長い時間、運動を続けていると、筋肉に疲労物質が溜まって、十分な力が発揮できなくなります。  でも同様のことが起こり、が働く時間と量に比例して、睡眠促進物質が溜まってきます。現在、睡眠促進物質としては、プロスタグランディン や サイトカイン、神経ペプチドなどが知られていますが、それぞれの詳しい働きはまだよく分かっていません。

睡眠促進物質が増えすぎるとが壊れてしまうので、睡眠促進物質の生産を止め、さらにこれを分解するために、の働きを止めて眠る必要があります。このメカニズムを、恒常性維持機構と呼びます。徹夜明けのときに深く長く眠るのは、主にこのメカニズムによるものです。

真っ暗な実験室で生活していても、人間はある程度、規則正しく眠ったり目覚めたりします。これは、体に組み込まれている体内時計のリズムに従って、生きているからです。体内時計は  にある中枢時計と、体中のあちこちにある末梢時計がありますが、私たちの中枢時計の1日は24~25時間周期です。

体内時計の周期に従って、夜に眠くなり、朝には自然と目覚めるリズムを、概日リズムといいます。概日とは、「 およそ1日 」 の意味です。徹夜明けの朝に、眠気が少し軽くなるのは、この概日リズムによるものです。また、人間は睡眠だけでなく、体温や血圧、脈拍、ホルモンの分泌、免疫なども概日リズムの影響を受けています。

睡眠促進物質と体内時計のほかにも、眠気の強さを決める要因として、ストレスや悩みなどの精神的な要因、光や音などの環境要因、さらには病的要因などがあります。

睡眠のリズム

眠り猫
ノンレム 睡眠 中の猫は、脳が休んでいますが、何かあればすぐに体が反応できます
睡眠中の波には、一定のリズムがあります。寝ついてから次第に、睡眠が深くなり、最も深くなってしばらくすると、今度はだんだん浅くなってきます。多くの人で睡眠の周期は約1.5時間あり、一晩に4~5回ほど繰り返されます。

睡眠が浅くなったところで目が覚めると、眠気が少なくスッキリ起きられます。ですから、寝ついてから6時間や7時間半、9時間たったころに目覚ましをセットしておくと、心地よい朝を迎えられます。

睡眠は、深さによって4つの段階に分けられていますが、性質の面でも2つに分けられています。ノンレム睡眠 と レム睡眠 です。レム睡眠は、Rapid Eye Movement の頭文字で、眠っているのに目玉が盛んに動いている状態です。

ノンレム睡眠中は、全体の活動が少なくなるので、  が休んでいる状態です。脈拍数や血圧、呼吸数も減り、内臓も休んでいます。猫がアゴを前足にのせるなどして、行儀よく眠っているときの睡眠がこれです。

ノンレム睡眠中には、成長ホルモンが分泌されたり、病原菌に対する抵抗力が強化されたりします。成長ホルモンは、子どもを成長させるだけでなく、日中に痛んだ細胞をメンテナンスしてくれるので、大人にとっても重要なホルモンです。

眠り始めには少ないレム睡眠も、朝に近づくにつれて増え、睡眠周期の2~3割を占めるようになります。レム睡眠中は、ほぼ全身の筋肉が弛んで、体が休んでいます。猫が横に倒れて眠っているときが、この状態です。

でも、は起きているときと同じくらい、盛んに活動しています。レム睡眠中に目が覚めると、夢を思い出しやすくなることから、このときに記憶を定着させたり、起きているときの行動のシミュレーションをしていると考えられています。